U's Cafe

「普通のカフェ」だからできること。ユーズカフェから地域の交流を取り戻せるか〈後編〉

隣の家に誰が住んでいるのかわからない」「地域の人の顔と名前が一致しない

そんな地域住民のつながりが希薄になった現代において、「高齢者の孤独死」や「社会から孤立した子育て」が社会問題になっています。

そんな中、神奈川県川崎市では街の失われたコミュニティを取り戻そうと、「子育て」「介護」「病気」「障害」など様々な問題を抱える人やその家族が気軽に立ち寄れる地域のコミュニティカフェ作りが「U’s Cafe(ユーズカフェ)」では行われています。

そんな「ユーズカフェ」の取り組みを、代表である川田和子さん(以後、川田さん)にインタビュー(後編)をご紹介します。

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ヨクラス

 

まず「知る」ことの大切さ

–ユーズカフェでの意見交換や交流は、具体的にどんなことを行っているのですか?

 

川田さんユーズカフェは、連絡会の1つの事業です。そのほかに啓発・啓蒙活動、イベント活動、相談事業があります。
また、専門家による健康推進チームを結成し、介護予防活動を実施しています。
理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士、脳・筋トレ指導者などが、その日の担当者でメニューを決めます。
認知症専門病院の看護師や家族会の方による認知症講座「聞いて・話して」や、イベントでは「ヴァイオリンコンサート」、「男の料理教室」「バスツアー」などを実施しています。

–では、そういう方を対象にした勉強会ですか?

川田さん:そうですね。認知症はいつ誰もが起こり得る症例なわけだから、自分や自分の家族が今その段階じゃなくても、いざ家族にそういった症状の人が出てきた時に理解して対応できれば、そんなに混乱することはないだろうと思うんです。

–確かにおっしゃる通りですよね。

川田さん:それは隣近所でも同じことです。例えば「隣の人認知症らしいけど、いつも大きい声を出して迷惑。家族がいるのに何やってんだ」と思っていたとしても、認知症について知っていて、「これは家族がいてもどうしようもない、治らないものだ」と知ってくれさえいれば、隣の人も理解して我慢してくれたりすることはあると思うし、当事者家族のストレスも少なくなると思います。だから、まず「知ってもらう」ことが一番大事なんだと思っています。

–「知る」と「知らない」では、それを目の当たりにする人にとってのストレスも減りますよね。

川田さん:先日の勉強会では、認知症という大きいくくりを説明したあと、認知症の種類である「アルツハイマー型」「脳血管性」などを題材にしました。さらに、少ない症例である「ピック病」という「前頭側頭型認知症」「レビー小体型認知症」も例にあげました。まだまだ事業所の方やヘルパーたちでも知らない人がいるんですよね。

–認知症でもいろいろ症例があるんですね。やはり知ろうとしないと、私たちのようなまだ介護からは遠い若い世代は勉強会には行きにくいというハードルはあるのかなと思います。
私たちが認知症について知らなければという動機がまだまだ少ないのかなと思っていて。そういうことも含めて土壌を作るということは私たちがしたいことであります。

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川田さん:そうですよね。例えば地域包括支援センターもできてから何年にもなりますが、やっぱり周知されてなくて
家族が認知症になって介護サービスを受けたい時になって初めて存在を知るような状況です。

–普通に暮らしていれば知ることはないかもしれませんね。

川田さん:若い人たちでも、家族間でそういった問題を抱えていたら別だけど、そうじゃなければ直接自分には関係ない、遠い先のことだと感じてしまいますよね。
でもヨクラスとして、「誰にでも起こり得る」とか、身近で現実化してきているというのを発信してもらえたらいいなと思います。
若い人の親でも40代くらいからは認知症になってもおかしくない年齢ですし、おじいちゃんやおばあちゃんが認知症で、親がすごく苦労している人たちもいるかもしれない。

–そういう場面を前にしたとき、このヨクラスの発信が何かしら行動を応援するものでありたいと思います。

川田さん:実際介護をしている人って、忙しくて日中出歩けなかったりするので、情報としてサイトでどんどん流してもらって、介護の知識としてためてもらい、手助けになってもらえたらいいのかなと思います。

–実際ユーズカフェに来られる方は、何歳くらいの人が多いですか?

川田さん:50代 や、60~70代の方が多いですけど80代の人もいますし。今日みたいにお子さん連れの方も来ます。

–最初から多世代の方がいらっしゃってたんですか?

川田さん:実はここのちらしを配った時、普通のカフェだってみなさん認識してくれなくて(笑)。
ここは何かあった時に相談する場だと思われてしまったのね。場所自体もわかりづらいし。
建物自体は1年前くらいからできてたんですけど、ずっと営業しないまま置いてあったから始まってもわからない人が多くて出足が遅くなってしまったんです。
最近では、来た人の口コミで広まっているけど、まだまだ周知されていない。まだ始まってから半年くらいなので、これから口コミでどんどん増えていってほしいところです。 

見守るという交流

–このコミュニティカフェは他にどういった活用ができますか?

川田さん:これからは地域住民や地域コミュニティの協力を得て「子供や高齢者を見守る」体制が必要だと思っているので、ここはそういう場になればと考えています。これから川崎市だけじゃなく全国で「高齢化」は進んで行政の介護サービスでは、今以上には手厚く介護してもらえるってことはないと思う。

–具体的に「見守る」とはどういったことですか?

川田さん:病気になった時に一番苦しむのは当事者です。健康寿命とは、健康上の問題なく日常を過ごせる期間のことです。健康寿命を延ばせば、その人にとって普段通りの生活が長く営めるということですよね。だから、健康寿命を延ばすことがすごく大事なことです。

介護保険制度は地域保健で、給付もそれぞれの市町村によって違いますから、それに合った予防をしてくださいと国から市町村になげかけてもいるわけです。
その上で川崎市も平成29年からいよいよスタートするという話になっています。だから、これからは「健康を維持しましょう、病気を予防しましょう」という時代になってきています。

–ということは、こちらは予防のことを考えて作られたということですか?

川田さん:予防のことだけじゃないですが、啓発・啓蒙活動の中で目指すことの 1 つではありますね。
例えばこれから、病気の症状が重度になったとしても、自宅で亡くなるまで過ごせるのがケアシステムです。そのために、事業所やケアマネじゃーさんなどと組み、お互いを見守ることで、「ちょっとおかしいかもしれない」と声を出してあげることができます。

地域一帯での見守り、というイメージでしょうか?

川田さん:そうですね。お互い見守りましょうという認識を持ってほしい。ただ、「あの人心配だわ」と思って、すでに交流があったとしても、やっぱりなかなか声を出せないですよ。
だから声が出せるような繋がりをもつためにいろんな取り組みをして、顔を見合わせてほしいんです。

ここには色んな人たちが来ます。普段の生活や自治会では会わない人たちとの交流が生まれれば、何かあった時に声を出しやすいですよね。
それに、自分が声をあげられなかったとしても、他の人たちが声をかけあっていれば、「あ、自分も声を出していいんだ」という雰囲気作りができます。
そういう目的もあると同時に、単純に健康であればいろんな地域活動ができますよね。だって今60歳っていったって、私も62歳になったんですけど、まだまだ若いでしょ?(笑)

–お若いですよ! 私たちが子どもの頃「30歳っておばさんだ〜」なんて思っていましたけど、実際はそうではない、ということと一緒ですよね。

川田さん:そう。昔の60歳とは違う。と、自分では自負しておりますけれども(笑) でも、着実に60年という月日は生きているわけで、色んな知識や経験があるわけです。
その知識や経験を持って地域に戻ってくる。じゃあ、豊富な知識や経験を地域貢献に使ってもらえれば、地域の活性化ができる
そういった方たちが元気で地域貢献ができるよう、私たちが率先して健康の維持を進めていきますよということも連絡会活動の中に入っています。

–定年退職をされた方は、時間もたくさんありますしね。

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川田さん:あとは、高齢者だけでなく、小さいお子さん連れのお母さんの声を聞ける場にもなれたらと思っています。お母さんたちみんなで集まってストレスが発散できればいいけど、返ってそれがストレスになる方もいて。一人で出かけることも多いと思うんですが、気兼ねなく話してくれる場になれたらと思います。

–同年代ではなく、自分の親くらいの人に話を聞いてもらいたいことは、あると思います。

川田さん子供に健やかに育ってほしいと思ったら、まずは親です。
親が健全な精神を持たないと、子供にも影響してくるのでね。小学生の場合は子供だけじゃなく、親も含めて見てあげなきゃいけないんです。そういう意味では子供から高齢者までそれぞれの役割があります。

–高齢者の方に話を聞いてもらうということですか?

川田さん:そう。高齢者は子供のお母さんの話を聞いてあげることを、若いお母さんや若者は高齢者ができない体力的な手助けができますよね
そうやってお互いがお互いの役割で、自分が今の年齢でできることで他の人と接するっていう交流がもてます。なにもね、大げさなことじゃなくていいんですよ
ただほんとに、自分が目にするところの人たちをちょっと気遣ってあげて、声かけて、ただ挨拶ひとつするだけで人のつながりは続いていきますからね。
そういうことが自然にできる環境が整えば、心優しい地域になると思います。そういうのを目指しています

–高齢者と若者だけでなく、すべての人がかかわり合えればいいですよね。

川田さん:はい。社会を構成しているのは大きくは健常者と呼ばれる方と障害者と呼ばれる方たちです。しかし、健常者仕様の社会になっていますよね。だから、障害者は困ってしまいます。
◯に□が入らないからおかしいと考えるほうがおかしい。
◯なら◯、□なら□と認めてあげればすっきりします。今、目の前の人を見て受け入れてほしい。
認知症状を抱える方もパーキンソンの方も増え、不安な思いを抱えている方もいるでしょう。
受け入れるためには「知ること」が大事です。だから、啓発・啓蒙活動にも力を入れています。

 

U's Cafe

連絡会には障害者施設(入所・通所)が所属していますが、利用者もまた社会の一員としてできることはやりましょうということで、外活動のときに防犯パトロールも兼ねて、地域を見て歩いてもらっています。
また、ユーズカフェにもボランティアとして参加してくれる方もいますし、もちろんお客様として来店される方もいます。
普通にあるがままに接していると、心優しい感情が芽生えます。その感情はその方がいるから得たものだと思います。
どんな方でも、ユーズカフェに来店されたときに、気持ちを解きほぐしていただけるよう、また連絡会活動では心身ともに元気になっていただけるよう考えています。連絡会活動の広報は各自治会が受け持ち、窓口はユーズカフェとなっています。

 

ユーズカフェの取材に行って感じたこと

若者から高齢者までが安心して暮らせる街作りの拠点としてユーズカフェの役割は素晴らしいと感じました。小さな子供が遊ぶ横で、高齢の方が井戸端会議をする。本来あるべき街の姿をユーズカフェに見ることができます。

子供が高齢者に育てられ、高齢者は若者に見守られる。少子高齢化の進む日本において世代を超えたつながりが必要不可欠になっています。その上で、街のコミュニティが果たす役割は大きいと感じます。

一方でユーズカフェにもまだまだ課題があります。子供や子育て世代、高齢者が利用しても、肝心の10代から50代の現役世代の利用率がまだまだ低いのが現状。平日の日中、都心のオフィスや学校に行き、なかなか街のコミュニティに関わることのない世代。自分も含めたこれらの世代が如何にして街のコミュニティに参加していくのか。これからのユーズカフェの挑戦が問われます。

 

「U’s Cafe(ユーズカフェ)」
住所:神奈川県川崎市宮前区菅生ヶ丘23-6
電話番号:044-976-3825

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(2017.4 再編集済)