フキデチョウ文庫

自分の職場を親にみせられますか?【岩手県盛岡市・フキデチョウ文庫】Vol.3

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玄関にいつの間にか増えていったという置き物。人が集っている証拠だ。(筆者撮影)

岩手県盛岡市。

盛岡駅から北上川、中津川を渡り、街中を歩き懐かしい町屋の雰囲気が感じられる通りに、通所介護施設「フキデチョウ文庫」があります。

2013年7月に開所以来、地域住民向けの図書館や交流スペースを併設し、高齢者の居場所が地域の中で当たり前となる日常をつくり続けています。

全3回に渡るインタビューの最後に、フキデチョウ文庫のユニークな働き方について、運営する一般社団法人シアワセ計画舎代表の沼田雅充さんにお話をうかがいました。

 

口コミで人が集まってきた

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こちらも、いつの間にか集まっていたというチラシ(筆者撮影)

ー地域図書館がある介護施設というと、珍しい取組みになりますね。事業に共感してくれるスタッフはどのように集めたのですか?

沼田さん:(従業員のシフト表を指差し)この方とこの方は、子どもが先に地域図書館に通っていて、そこから親であるこの方々が働いてくれるようになったんです。子どもからその親につながる、なんてことは想定していなかったので、驚きましたね。

 

ーそれは嬉しい誤算でもありますね。そうしてスタッフが入って来たときに、心がけていることはありますか?

沼田さん:一般社団法人の理念をあえて言うなら、ありません。だって個人の価値観がどんなときも優位に立つでしょう。それならば個人の価値観、介護観を大事にしてほしいと思っていてますよ。

あまりにもフキデチョウ文庫が考えていることと外れた場合は話をしますが、それ以外は言わないですね。スタッフを管理することは考えていません。

 

ユニークな兼業の仕組み

ースタッフの価値観ややってみたいことが優先されるとのことですが、具体的な例をお聞かせください。

沼田さん:(従業員のシフト表をみて)このシフト表をみると、「調」って書いてあるでしょう? 以前は、調理専門の方に来てもらっていたんですが、うちは利用者の方と一緒に昼食を作るので、やはり動作のタイミングだったり、食器の置き場所が違うだけでちょっとしたトラブルになってしまう

実はこの方、看護士なんだけど、「調理が得意だからこの日は調理をする日」、「この方は社会福祉主事だけどこの日は調理をする日」というようにしたんです介護士や看護士の方が対応に慣れているので、そうした方がトラブルにならないんです。ある程度利用者さんの動きが予想できるので。

普段とは違う役割を1日経験するだけでも、視点の置き方が変わり、普段の仕事にちょっとした工夫ができたりと、可能性が広がるのかもしれません。

 

自分の職場に親が通う

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インタビュー当日のスタッフのお子さん。配膳の手伝いの様子。(筆者撮影)

ー今日は、小学生のお子さんが2階のスペースで過ごしていますね。スタッフのお子さんですか?

沼田さん:そうですよ。スタッフのうち2人は、親御さんがフキデチョウ文庫の利用者です。1人は自宅から、1人は高齢者住宅に住んでいて、こちらに通っているというわけです。

働いているスタッフのお子さんが小学生ですから、学校が長期休みのときは、子ども・スタッフ・利用者であるスタッフの親が、3世代で来ることになるわけです。

 

「自分の職場を親に見せられますか?」と沼田さんは言います。おそらく介護職が答えにくく、同時に必要な問いかもしれません。

介護という仕事が今よりも地域に開き、子どもなど多世代が日常の生活として行き交うことで、互いの存在そのものをなんとなくは知っている。そんなゆるやかな繋がりこそが、地域における介護施設の在り方であり、基本となっていってほしい。
そんなことを願いたくなる時間でした。

 


取材先情報

▷通所介護施設 フキデチョウ文庫

▷運営法人 一般社団法人しあわせ計画舎

▷住所 〒020-0871 岩手県盛岡市中ノ橋通一丁目8番6号

▷参照記事

子供と大人とお年寄り。みんなの「フキデチョウ文庫」|盛岡さんぽ
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