「スープの冷めない距離」が鍵。離れて暮らす親とどう関わっていますか?

「スープの冷めない距離」が鍵。離れて暮らす親とどう関わっていますか?

日本のひとり暮らしの 65 才以上の高齢者数は、 1980 年には 88 万 1000 人でしたが、 2025 年時点は 700 万 6000 人になると推計されています。(※1)

ひとり暮らしをしている 65 才以上の親を持つ方が、日頃どのように親と関わっていけばよいのかを一緒に考えていきましょう。

 

意識と現状のギャップ

「実は、親の生活環境はほとんど知りませんでした。」

老人ホームで生活相談員として勤務していたとき、老人ホームへの入居が必要になって初めてみえてくる親の生活や交遊関係に、いかに親について知らなかったか唖然とする方々に多くお会いしました。

また、 40 代から 60 代の 1000 人を対象にした調査では、介護は「誰の身にも起こり得る普通のこと」と全体の約 7 割が回答しているのに対し、介護に必要なお金や介護保険の仕組みについてを詳しく知っている人は約 2 割にとどまる(※2)など、意識と現状のギャップが大きく開いています。

 

スープの冷めない距離の人間関係がライフライン

以下の項目にそって、親の生活を見直していきましょう。

✔︎チェックポイント
■食事
・自炊と総菜(外食)の比率
・栄養バランス

■日課
・屋内の日課
・屋外の日課

■家族以外の緊急支援者

・そもそもいるかどうか
・親族や親しい友人との物的距離は

 

【食事】
百寿者の食生活からみると、次のような食生活が参考になります。(※3)

  1. 朝昼晩の 3 食を規則正しく食べる
  2. 腹八分目
  3. 緑黄色野菜を積極的にとる
  4. 魚・肉・卵・大豆製品をとる

 → 一見当たり前にみえる食生活ですが、料理をする体力が落ちてきている高齢者にとって、手軽なおにぎりやどんぶり、うどん、パンなどの炭水化物や、総菜だと揚げ物や味の濃いおかずがついつい多くなる傾向があります。

 

【日課】
外出していますか? それとも屋内で過ごすことが多いですか?
 →何を日課としているかで、コミュニティに関わっているかいないかがわかります。

 

【家族以外の緊急支援者】
「スープの冷めない距離」(大体 2 分ほどの距離)に、親族や仲のよい友人など頼れる人が暮らしていますか?
 →イギリスの老人病学者シェルドンが、別々に住む親の世帯と子の世帯において、容易に援助ができる距離の目安とした表現です。(※4)

親子に限らず、いつでも頼れる存在がどこに住んでいるかは、とても重要な要素のひとつといえるでしょう。

 

緊急時、家族以外の支援者として挙げられるのは、町内会の役員、区役所の職員、民生委員、ケアマネージャー、ヘルパーだそうです。

遠方に住んでいたり、直接的に親の日常を支えられないといっても、周辺環境を知り整えるだけで、変えられることがあるかもしれません。

 

「私は大丈夫だから!」の本当の理由

イギリスの社会学者ピータータウンゼント(※5)は、「孤独」と「社会的孤立」を区別しています。

孤独…「仲間付き合いの欠如、あるいは喪失による好ましからぬ感じ( loneliness )」であり主観的である。

社会的孤立…「家族やコミュニティとほとんど接触がないこと( unwelcome feeling )」であり客観的である。

 

「私は大丈夫だから!」という親の言葉の裏には、どんな生活環境にあるのか。本人の意思を尊重しながらも、そこを見極めることから始められるかもしれません。

 

※兄姉など家族との関係性・役割分担については、『世話「される」側から「する」側へ。「チーム」をつくり、家族で協力しあう 3 つのポイントで詳しく紹介しています。こちらも合わせてお読みください。

※家族との話し合いのコツについては、近日公開予定の『「先延ばししない」親との介護の話がしやすくなるたった 1 つのコツ』でさらに詳しく紹介します。

 

《出典》

(※1)老人に冷たい国・日本「貧困と社会的孤立」の現実 河合克義著より抜粋http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334038700

(※2)親の介護と認知症に関する意識調査 2013 年ソニー生命保険株式会社調べhttp://www.sonylife.co.jp/company/news/25/files/131107_newsletter.pdf

(※3)超高齢化社会を見据えて、高齢者がよりよく生きるための日本人の食事を考える

高齢者における自立と食事の関係 より抜粋
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000015824.pdf

(※4)J・H・シェルドン(Joseph Harold Sheldon 1893 — 1972 )イギリスの老人病学者が 1948 年に発表した「The Social Medicine of Old Age」より

(※5)ピーター・タウンゼント(Peter Brereton Townsend 1928 – 2009 )イギリスの社会学者

参照:内閣府 第 2 節 高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向

photo credit: dave.see China Travel via photopin (license)