
世話「される」側から「する」側へ。「チーム」をつくり、家族で協力しあう 3 つのポイント
親と子の立場が逆転する介護のイメージは、家族にとって決して明るいものではないかもしれません。家族が介護で負担を感じる一番大きな要因は、精神的負担感です。割合にすると 6 割以上になり、肉体的負担感や経済的負担感より占める割合が多くなっています。(※1)
「介護力」は 6 つに分けられる
福岡県立大学看護学研究紀要(2014) によると、「介護力」は 6 つの要素によって構成されるといいます。
- 【要介護者を思いやる力 】
- 【介護ケア実践力】
- 【自己の健康管理力】
- 【介護生活からの転換力 】
- 【周囲の援助活用力】
- 【介護に対する負の感情表出力 】
今回は「介護力」を構成する要素のひとつ、【周囲の援助活用力】における、家族の「チーム」のつくり方 3 つのポイントをご紹介します。
福岡県立大学看護学研究紀要( 2014 )における【周囲の援助活用力】を図る指数は、
・家族や親戚、近所の人が介護を手伝ってくれている
・一人で何でもやろうとしないで周りの人に協力を頼んでいる
・介護の大変さや辛さを理解してくれる人がいる
と、あります。
では、どうすれば上記のような援助活用力を得られるようになるのでしょうか。
1.家族同士の対話を
兄妹や親戚同士は、「なんとなくこうだろう」という予測がついてしまうほど身近な人間関係。
だからこそ、家族で話し合うときに心がけたいのが、相手の話や状況を互いに率直に聞き、話をし合うことです。
生まれ育った環境が同じでも、今は別々に住み、家庭状況はもちろん、親に対して感じる感情も実に様々です。
率直な気持ちを言葉に出し合うことが、「チーム」をつくる土台になります。
【話しあう内容の例】
・ 親に対して抱いている自分の気持ち |
2.役割分担は得意なことを
感情を言葉に出したあとは、役割を決めていきましょう。
「何だったら、家族みなで協力してできそうか」をモットーに、一人に役割が集中しすぎないよう、それぞれの得意分野を担当するように心がけていきます。
【役割分担の例(身体の介護に関わる役割以外)】
■コミュニケーションが得意なら、外部とのやりとり担当
■フットワークが軽いなら、日常のサポート担当
■細かい作業が得意なら、お金の管理 ○ 治療費・介護保険書類などの管理 ○ 連絡網係 |
※筆者の介護経験・介護経験者の話を元に作成
3.責任を押し付けない姿勢を
福岡県立大学看護学研究紀要( 2014 ) によると、親や親戚の介護をしている家族の性別は、男性 130 人( 20.0 %)、女性 520 人( 80.0 %) で、平均年齢は 64.1 才でした。
介護期間は、平均 5.04 年(最長 35 年)で、 1 日の生活の中で介護をする時間の割合が 4 時間以内の人が 334 人( 55.9 %)で半数を占めていたそうです。
決して簡単ではない介護が続く毎日の中で、物理的にできること・できないことが多く出てくるでしょう。そんなときに心がけたいのが、家族同士で責任を押し付けないということです。
性別にとらわれず、それぞれ得意なことを持ち寄って、家族で「チーム」をつくっていくのだ、という目的に向かいたいものです。
筆者も母親を看病・介護する中で大きな支えとなったのは、同じ状況にいる兄姉と役割を分担し、気持ちを理解し合えたことでした。
いかに【周囲の援助活用力】を高めていくか、今から考えてみませんか?
《出典》
(※1)家族介護者の介護力構成要素と介護負担感との関連 檪 直美*,尾形由起子*,横尾美智代**,田渕康子***福岡県立大学看護学研究紀要
表6 介護負担感による介護力の比較より
(※2)家族介護者の介護力構成要素と介護負担感との関連 檪 直美*,尾形由起子*,横尾美智代**,田渕康子***福岡県立大学看護学研究紀要
第 5 因子 周囲の援助活用力 より
http://www.fukuoka-pu.ac.jp/academics/nurse/bulletin2/11_2pdf/11-2-1.pdf
photo credit: Informedmag Working Together – Credit to informedmag.com via photopin (license)
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