「下宿」の新しい形。フランスの高齢者と若者のホームシェアって?

「下宿」の新しい形。フランスの高齢者と若者のホームシェアって?

2003 年、北西ヨーロッパを異常気象が襲い、フランスでは 35 ℃以上にもおよぶ猛暑の影響により、一人暮らしの高齢者を中心とした約 1 万 5000 人が熱射病と脱水症状のため亡くなりました(※1)。猛暑後は、高齢者と家族のあり方が問われるなど、高齢者の孤独な住居環境が社会問題として注目を集めるきっかけになりました。

一方、同じ社会問題として取りざたされていた、大都市の家賃高騰による若者や学生の住宅難の解消も急務とされていました。

 

独居老人と家賃高騰の解決策

異世代ホームシェアを推進する NPO 団体・Le Pari Solidaire(=パリの助けあい)は、「一人暮らしの高齢者の事故を未然に防ぐこと」「若者に安価な住宅を提供すること」の双方の問題を解決しようと創立されました。

受け入れまでの仲介役として、「高齢者宅の訪問」、「若者の事前面接」を Le Pari Solidaire が行ないます。面接を経て若者が高齢者の住宅を 1 人で訪問し、双方の合意によりマッチングが完了します。

トラブルを避けるために、家主である高齢者と学生(若者)の両者が理解し、同意するルール(※3)にサインし、同居がスタートします。同居後は、高齢者と若者の双方が Le Pari Solidaire に生活の報告を行い、ミスマッチが生じていないかを Le Pari Solidaire が確認します。(※4)
こうした異世代ホームシェアの活動はフランスの全国に広がっています。

 

双方に足りていないものを埋める

実際に異世代ホームシェアをしている例をご紹介します。

(以下、新聞記事訳)

「マリシェさんは看護師になるためヴァンヌからパリの学校に入学しましたが、家賃 400 ユーロ(日本円約 5 万円)で 10 平米の住居しか見つからなかったといいます。
コリッテさん( 85 歳)は老人ホームに住んでいましたが、他のお年寄りの方との共同生活が嫌だったといいます。
そこで、自宅に戻り 
Le Pari Solidaire を通じて、マリシェさんとの共同生活を始めました。
マリシェさんは、家賃を支払う代わり(※5)に、コリッテさんと一緒に夕飯を食べたり、その日にあったニュースの解説、ゴミ処理、窓の開閉、ベッドメイキングなど困った時のサポートを行なうことで、互いに助け合う絆が生まれたといいます。
友人同士として互いを信頼しており、家族愛に近いものを感じているそうです。

異世代ホームシェアは、高齢者にとっては若者と過ごすことで社会性を取り戻し、若者は共同生活の中でこの先の老いていく暮らしをイメージしながら勉学、仕事に打ち込むことができるのです。」

 

自分が高齢者になった時、どんな生活をしていたいか?

Le Pari Solidaire のホームページには、「この異世代ホームシェアは誰にでも適しているとはいえない」と書かれています。次に、「自分が高齢者になったとき、あなたはどんな毎日を送りたいのか。そこから考え始めて欲しい」というメッセージが続きます。

 

日本でも過去の大きな震災を経験し、家族の在り方、生き方について自分自身に問うた人も少なくないかもしれません。この先の暮らし方について、今一度考えてみませんか。

 

《出典》

(※1)フランスの平均最高気温は8月でも25℃程度と涼しい。

 

(※2)Le Pari Solidaire (=パリの助け合い)
http://www.leparisolidaire.fr/wp/(フランス語サイト)
“ソリデール solidaire ”というのは、“連帯的な”という意味の形容詞。その名詞である“ソリダリテ Solidarité ”という言葉は、労働運動やストの際に使われると同時に、何か大きな事件がフランスを襲ったときには、大統領や政治家が国民に対して“ソリダリテ”を訴えかける。この取り組みも、「この社会で共に暮らし、寄り添い、助け合って生きよう」という“ソリダリテ”と受け取れる。

 

(※3)
①異世代ホームシェア連盟が作成した共通の憲章:遵守すべき基本的な理念や原則、および基本的なルール
② Le Pari Solidaireが作成した独自の憲章:地域の事情に応じて定める理念や原則、および基本的なルール
③その他ルールについて:ケースごとに異なる詳細な取り決めの確認項目

 

(※4)NPOは定期的に住宅訪問や、メールと電話などで居住者と連絡をとり、生活の中でミスマッチが生じていないかを確認。また異世代同居をする人々同士でパーティーやお茶話会などを開催することで高齢者同士や若者同士で情報交換を通し交流を深めているNPOもある。

 

(※5)契約時に、①〜③が選べるようになっている。
①《無料住居》夕食以 降の毎晩を学生と高齢者がともに時間を過ごし、週末も学生が 家にいる場合は家賃が無料になる。
②《経済的住居》学生が 定期的に在宅し、買い物の手伝い、食事のシェア、郵便の受け取 り、PC操作説明などの日常生活の手伝いをする。
③《連帯住居》自立している高齢者への付き添い、時間帯の制限は無い。学生はどんな手伝いをするかは、自由に決めることができる。契約期間に関しては、基本は1年(夏のバカンスを除く約10ヶ月)契約が 中心となるが、半期間や研修期間など、個別対応も可能である。
若者が無料住居で契約しているために、居住者間のルールとし て、2週末に1回は週末在宅をすること、21時以降は在宅すること、ご飯は一緒に食べることなどが設けられている。

 

《参照資料》
平成24年度国土政策関係研究支援事業 研究成果報告書
地方都市における高齢者所有住宅の空き室を活用した新たな下宿事業の提案

株式会社三菱総合研究所
欧州に学ぶ脱・無縁社会への挑戦 第2回 フランスに学ぶ ~世代間同居が独居老人問題を解決する

 

世界の助け合いハウジングシステムから、 近未来の日本社会を救う解決策を探ろう 千葉大学 大学院工学研究科 建築・都市科学専攻 助教 丁 志映 フランス編:異世代ホームシェア

 


photo credit: pom.angers Le Puy, Haute-Loire, France via photopin (license)