
【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】光が射す高齢者が住む場所 Vol.2
【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】では、 5 つの様々な切り口で読み解くコラムを連載します。日本とデンマークの高齢者を巡る事情について比較をしながら、高齢者の暮らしをよくするためには何が必要かを考えていきませんか。
第 2 弾は、「デンマークの高齢者施設」。コペンハーゲンから鉄道で約 20 分の距離にあるフレデリスクバーグ市が運営する高齢者施設・フィントフォルムリタイアメントホームを訪ねました。
【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】
■Vol.1 先回りしない介護の考え方とは
生活を継続させる住処
高齢者施設というと、日本ではまだまだ大部屋の施設が多く残っていますが、デンマークでは 1952 年に制定された養老院(現在の高齢者施設の始まり)のガイドラインにおいて、高齢者施設の部屋は全て個室と決められていました。
生活を継続させるためには、個人のプライバシーを尊重しなければならないという姿勢が反映されています。

2007年に建てられた高齢者施設の外観 (※1)

各居室の前の廊下の様子。階によって絵画や壁の色が違う。 (写真提供:矢野拓洋)
現在のデンマークの高齢者住宅の居住設置基準は、日本は原則 25 平米(※2)に対して、 65 平米とされています。各部屋にシャワー・トイレ・台所が完備されていることも必要になります。
入居されている部屋をみても、家財道具や絵画などを持ち込み、家の暮らしをそのまま営んでいる入居者がほとんどでした。

絵画など家財道具は自由に持ち込める。天井にはベットから車いすに移動する際に使用するリフトが設置されている。 (写真提供:矢野拓洋)
光が中心にある暮らし
デンマークを含め北欧諸国は、冬になると 15 時には暗くなり始めるため、自然の光を少しでも取り入れようとする建築が多くみられます。
「北欧デザイン」などと言われ注目されていますが、日照時間の短さから、家の空間を少しでも明るく彩るためにデザイン文化が進んだとも言われるほどです。

フロアリビングの様子。どの部屋も必ず自然光が差し込むよう設計されている(写真提供:矢野拓洋)
そのため、フロアリビングはもちろん、各居室の窓は大きく設計されています。
居室の中に入ると、窓が大きいため室内にいても光が十分に入り、日中は電気をつける必要がありません。
狭さを感じにくく、窓からは人の動きを絶えず見ることができ、開放的な気分を味わうことができました。

居室内の窓も壁と同じ高さ。 (筆者撮影)
外との距離を断たない
人の手が届く高さまでしか柵がないバルコニーは、日本の高齢者施設ではめったに見ることができません。転落のリスクがあるとして、施設の設備としては採用されることがほとんどないためです。

フロアリビングから一歩出れば外のバルコニー。窓に施錠はされていない。(筆者撮影)
柵がないことで、外の景色を好きなだけ楽しめる高齢者の過ごす場をつくり、外部との距離を施設に入る前と同じように保っています。
「先回りしない介護の考え方とは」でもご紹介したように、リスクよりも、生活の豊かさを重要視していることがよくわかる光景でした。
自分が老いていく生活の場は、どんなものであってほしいのか。そんな自分の問いに、 1 つの答えを見せてくれるかのような、デンマークの高齢者施設。
あなたはどんなことを感じましたか?
次回は、デンマークの福祉政策に、いかにして高齢者の声が届いていっているのかをご紹介します。

子連れので視察の様子。(右が筆者) 写真提供:矢野拓洋
【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】
Vol.1 先回りしない介護の考え方とは
《視察した高齢者住宅》
FLINTHOLM RETIREMENT HOME(フィントフォルムリタイアメントホーム)
フレデリスクバーグ市が運営する高齢者施設。
住所:Elga Olgas Vej 5, Frederiksberg
施行年:2007
面積:4,670 m2
居室数:50
http://www.dac.dk/en/dac-life/copenhagen-x-gallery/cases/flintholm-retirement-home/
(※1)引用写真:FLINTHOLM RETIREMENT HOME ホームページより
http://www.dac.dk/en/dac-life/copenhagen-x-gallery/cases/flintholm-retirement-home/
(※2)日本のサービス付き高齢者住宅の場合
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