デンマーク

【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】高福祉の要・高齢者委員会制度とは Vol.3

 

デンマーク

手をつなぎ颯爽と街中を歩くシニアのカップル。(筆者撮影)

 

【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】では、 5 つの様々な切り口で読み解くコラムを連載します。日本とデンマークの高齢者を巡る事情について比較をしながら、高齢者の暮らしをよくするためには何が必要かを考えていきませんか。

 

第 3 弾は、「高齢者委員会制度」。
高齢者自身が、自分たちの必要な福祉のサービスを求めていく姿勢を一緒にみていきましょう。

 

【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】
■Vol.1 先回りしない介護の考え方とは
■Vol.2 光が射す高齢者が住む場所

 

市民の小さな声の代弁者

高齢者委員会は、デンマーク各市町村に法律上設置が義務付けられている委員会で、委員は 60 歳以上の住民による選挙で選ばれます。

高齢者委員会は、法的な決定権限を持つ機関ではなく、市町村の議会に対して助言や提言をする立場の機関です。市町村の議会は、配食、低床バスの運行、バスの運転手の乗降補助義務など、高齢者の日常生活に関する政策を決議する際に、それに先立って高齢者委員会に意見を聞かなければならないと法律上義務付けられています。

委員となる高齢者は看護士など医療や福祉に携わった経験者で構成されることが多く、無報酬で、 ボランティアの組織ですが、運営にかかる経費は市町村が負担しています。(※1)

 

市の運営に対して、市民から選ばれた委員が市民の小さな意見を届けることで、更に暮らしやすくするための提言を行なっているのです。

 

高齢者の権利を守るために

先回りしない介護の考え方とはにて取り上げた、介護 3 原則(高齢者福祉 3 原則)。

1979 年に国会で高齢者政策委員会が設立されると同時に、デンマーク全市町村に 100 以上の市民グループが立ち上がり、高齢者自身が自分たちの老後のあり方について議論する場が設けられました

その場において、「自分たちが受けたい介護とは?」の対話が重ねられた結果、現在の介護 3 原則(高齢者福祉 3 原則)の土台となる考えが生まれたのです。(※2)

 

高齢者委員会が設置されたのは、こうした高齢者同士の話し合う文化があったり、高齢者の権利を守る権利が必要だという社会の流れの中で、 1984 年から複数の市町村で任意的に高齢者委員会が設置されたのが始まりでした。
その後、高齢者委員会の役割が評価され始め、 1997 年に制度として法制化されま した。高齢者委員会は市町村単位での組織ですが、最終的には国に対して助言や提言を行なっています。

 

権利と主張のバランスをとりながら

コペンハーゲン市福祉高齢課との打ち合わせの様子。(筆者撮影)

コペンハーゲン市福祉高齢課との打ち合わせの様子。(筆者撮影)

日本にはデンマークの高齢者委員会に当たる組織はありませんが、こうした仕組みをつくろうと動いている団体もあるようです。

 

デンマークの意見交換を通して

デンマークに留学し、意見交換をして感じたことは、 2 つあります。

①対等な立場

まず、それぞれが自分の意見をはっきりと持ち、意見を人に言うことを恐れたり、遠慮したりということがありません。ただし、その前提となるのは、「対等な立場」として互いに意見交換をしているのだという土台があるからなのだと思います。

人に決めてもらうより、自分たちの考えを市町村の行政や議会に助言や政策提言をし、政策立案の段階にかかわる。主張ばかりをするのではなく、相手を尊重しながら話し合いに時間をかけて合意形成を図る国民性であると感じました。

 

プロセス自体を楽しむ姿勢

そしてもうひとつ気づかされたことは、「プロセス自体を楽しむ姿勢」です。

デンマークの打ち合わせに行くと必ずといっていいほど、コーヒーや紅茶はもちろん、手作りのお菓子やパン、果物が並びます。

デンマーク人がこうした話し合いを好むのは、話し合いが行われる場そのものが楽しい場であるからかもしれません。

 

次回は、幼児と教育者の関係性、障がいや性別の有無に対してどのように暮らしているかを通して、デンマークの人の育ち、老いていく流れをみていきたいと思います。

 

【老い方は自分で決める国・デンマーク便り】

Vol.1 先回りしない介護の考え方とは
Vol.2 光が射す高齢者が住む場所

 

 

《参照》

(※1)第 2 章 デンマーク・ロスキレ市の高齢者委員会 (2002年)
http://www.asahi-net.or.jp/~LC1T-KYM/nagosi/2sho.pdf

(※2)デンマークに学ぶ高齢者福祉 ───政策イニシアティブが生み出すユーザー参加型社会 猪狩典子
5.1 ボトムアップで創られた明確な理念 参照
http://www.glocom.ac.jp/chijo_lib/118/052-062_A_igari.pdf

デンマークの社会保障を支える ユーザー・デモクラシー 眞鍋 彰啓 参照
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/kokusai/kokusaishitsu/data/JS_No63.pdf