韓国の介護事情から学ぶ、介護生活をさらに良くする3つのヒントとは

韓国の介護事情から学ぶ、介護生活をさらに良くする3つのヒントとは

韓国で 2008 年に開始された、日本の介護保険制度にあたる「老人長期療養保険制度」。この制度の中に、「同居家族療養制度」という日本にはない制度があります。

2009 年から 2010 年に行なわれた韓国の調査(※1)において、「同居家族療養制度」を利用することで、家族を介護する本人達が、介護を肯定的に捉えられる傾向があることがわかってきました。

 

1.資格取得で介護スキルを上げていける

「同居家族療養制度」を利用すると、家族を介護する人が療養保護士(日本でいう訪問介護員(ホームヘルパー))の資格を取得できます

年齢と学歴の制限はありませんが、知識講義 160 時間及び実習 80 時間を含み、総計 240 時間の履修が義務づけられています。

調査(※1)によると、療養保護士になるために受けた教育や実習から介護の要領を得たり、急な症状が出てきたときに適切な対処できるようになることで、療養保護士が介護スキルの向上を実感すると答えています。

 

2.家族を介護すると賃金が得られる

療養保護士になると、先ず療養保護士派遣事業所と雇用契約を結びます。そして、要介護認定を受けた同居している家族に対して介護サービスを提供しているとみなし、 1 日あたり 2 時間のみ介護労働としての賃金を得ることができます

例としては 1 ヶ月 174,000 ウォン、日本円で 16,733 円(H 28 年 1 月時点)が実質の収入となる計算となります。(※2)

家族介護が無償ではなく対価を得ることで、経済的な支えとなり、心理的な切り替えに繋がることが、家族介護の困難を徐々に乗り越える手がかりになっていると分析されています。(※1)

また、対価が得られる仕組みは、日本においても導入を検討されたことがあったといいます。(※4)

 

3.同じ状況にいる人と交流が持てる

介護事業所と雇用契約を結んでいる他の療養保護士との交流を通して、仲間ができます

家族を介護していることが自分だけではないことに安心感を得ることができ、さらに他者の介護経験を見聞きし、自分の家族介護の状況を客観視できると答えています。(※1)

なお、上記 3 つは、在宅で介護を行う家族が事実上要介護者と同居していること、療養保護士 1 級の資格を持っていることが条件という前提の上でご紹介しています。(※3)

 

同居家族療養制度」という公的制度を中心に、韓国の状況をご紹介しました。

現金給付、という制度は難しいとしても、介護を学び資格を取得したり、家族介護を抱え込まず、理解し合える人間関係を築くなど、韓国の介護事情から、家族の介護、生活をより良くするためのヒントが隠されているように思います。

みなさんはどう考えますか?

 

《参照資料》

(※1)韓国の家族介護者における肯定的介護認識に関する研究 -「同居家族療養制度」に焦点をあてて-  張 英信 日本社会福祉学会 第 58 回秋季大会資料http://www.jssw.jp/archive/archive/abstract/2010-58/independent-research/H9_8_4.pdf

(※2)韓国の老人長期療養保険制度における ケアマネジメントの課題 ―在宅ケアを中心に― 西下 彰俊 (2) 在宅サービスの種類と特徴 より

”夫の要介護度が 2 等級・毎日訪問療養サービスを 90 分必要 とするケースで、その全てを療養保護士の資格を持つ妻が在宅で介護する場合を想定。

時間帯や曜日による割り増しは設定されていないので、このケースでは、1 日3,200 ウォン× 30 日= 96,000 ウォンを夫は 1 か月ごとに自己負担することになる。

療養保護士の妻は、所属する療養保護士派遣事業所の時給が 6,000 ウォンだとすると、1 日 9,000 ウォン、1 か月で 270,000 ウォンが同居家族を介護することによる収入となる(西下彰俊、2009、 p. 8)。差し引き 174,000 ウォンが実質の収入となる。”

http://www.tku.ac.jp/kiyou/contents/law/20/Nishishita_Akitoshi.pdf

(※3)韓国における家族介護者の肯定的介護認識に関する研究 -同居家族療養制度の利用との関係に焦点をあててー  張 英信  第 3 節 同居家族療養制度とは

https://www.luther.ac.jp/public/doctor/dl/130123_02.pdf

(※4)投稿論文 韓国の家族介護者における肯定的介護認識に関する研究  張 英信

2.韓国の老人長期療養制度と同居家族療養制度 より抜粋

”日本の場合は,家族介護への現金給付を認めるかどうか,介護保険制度スタートにあたって 議論がおこなわれた。そこでは現金給付を認めると妻や嫁,娘といった女性が担ってきた家族介護からの解放,軽減が出来ず,介護保険が目指す“介護の社会化”に反することを理由に家族介 護の現金給付は認められなかった。樋口( 1998:45 )は「現金給付によって,特定の介護者にお任せ傾向が強まり,他の家族の無関係だとする意 識が助長されるし,職業選択の自由を奪われる恐れがあり,それによって家族介護者,特に女性を拘束する恐れがある」と指摘している。”

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